「つぶてソングの集い in みやぎ」レポート

NHK仙台少年少女合唱隊 仙台三桜高校音楽部

2014年 3月28日(金)名取市文化会館中ホールにて「つぶてソングの集い in みやぎ 音楽の架け橋〜杉並・ふくしまからみやぎへ〜」を開催しました。(その一部を、 動画サイトでご覧いただけます。) 今回は、NHK仙台少年少女合唱隊、仙台三桜高校音楽部、宮城教育大学・東北大学学生有志混声合唱団、そして名取混声合唱団の皆さんが、作曲家・新実徳英氏の指揮のもと、心のこもったつぶてソングを熱唱。また被災地へ優しいまなざしをもつ朝岡 聡さんの司会進行は、ユーモアにもあふれ、とても温かい会場の雰囲気をつくって下さいました。

宮城教育大学・東北大学学生有志混声合唱団 名取混声合唱団

前日はリハーサルを兼ねて、作曲家・新実徳英氏による合唱セミナーが行われました。初めての新実氏との出会いに、ちょっと緊張した雰囲気が‥‥。でもそれは最初だけで、充実した音楽に満ち溢れる時間でした。 宮城スタッフ代表の原田博之さん(宮城教育大学・准教授)は、『教育音楽』6月号(音楽之友社)に、次のように記して下さいました。

「ワークショップで新実が各合唱団の状況に応じた様々なアドバイスを与えると、演奏が実に生き生きと生まれ変わっていく。(中略)この詩の一行をなぜもう一度取り上げたのか、その時どのような思いであったのか、作曲者本人の言葉であるからこそ実感として心に残り、受講者の演奏の力として宿っていく。作品が生み出された瞬間に想像を巡らし、作曲者が詩にいかに深く思いを持ち作曲しているかについて考える機会となった。」

テノールソロ:佐藤淳一氏(ウインドアンサンブルとともに)

集い当日、合唱団の歌声をウインド・アンサンブルが重厚であたたかい音色で支えてくれました。東京からのプロのフルート、トロンボーン奏者、仙台のトランペット奏者に加えて、宮城教育大学の大学院生がクラリネットとテューバで参加。

対談:和合氏×新実氏、朝岡 聡(進行役) 和合氏による朗読


今回も詩人で「詩の礫」の著者である和合亮一氏がかけつけて下さり、新実氏と対談が行われました。 テノール・佐藤淳一氏の独唱「涙が泣いている」に先立ってその詩を朗読。「ふくしまを、東北を取り戻したい」という和合氏の強い力をもつ声、そして佐藤氏の情熱的な歌声は、会場の人たちの胸に突き刺さるように響きました。




つぶてソングは国内に留まらず、外国からも歌声が寄せられました。仙台出身の声楽家・佐藤 香さんの指導によるニューヨーク州立大学パーチェス校合唱団の「あなたはどこに」を映像とともにご紹介しました( 動画サイトでご覧いただけます)。 集いの最後は、出演者全員による合同演奏「重なり合う手と手」、そしてフィナーレの「あなたはどこに」では、会場の皆さんも全員が立ち上がって合唱に加わって下さいました。 音楽を通して心が一つになる、まるで両手をつないで輪になっている‥‥そんな思いにからだ中が包まれる瞬間でした。
出演者合同演奏
会場と出演者全員が声を合わせて
     


新実氏は今回のプログラムに次の言葉を記されました。

「歌や合唱に何ができるのだろうか。これはつぶてソングを作曲する時からずっと自分のなかに漂っている疑問符です。が、被災地の皆さんと声高らかに歌いあい聴きあう時、互いの中につながりが生まれるのを実感します。やって良かったと思うのです。」 そしてこの文章の最後は「一刻も早くつぶてソングが「過去のもの」となる日が来るよう祈りつつ‥‥。」と結んであります。

真の復興の日が訪れ、「芸術」としてこの美しいつぶてソングが歌われる時が来る事を信じて「つぶてソングの集い」プロジェクトは、これからも微力ながら活動したいと思います。

ウィーン・フィル&サントリー音楽復興祈念賞の表彰

今回も昨年に続き、ウィーン・フィル&サントリー音楽復興祈念賞を受賞させて頂きご助成頂きましたことを、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。 また、この集いを共催して下さいました(公財)名取市文化振興財団様、ご協力下さった宮城の皆様に、心から御礼申し上げます。


「追記レポート」

後日、仙台三桜高校音楽部の皆さんが、作文を送って下さいました。その一つ一つすべてが純粋で尊く、とても感動しました。そしてそれらは「音楽の力とは‥‥」という問いかけに一つの答えを導いてくれました。すべてをご紹介できないのが残念ですが、ほんの一部分をご紹介します。

つぶてソングの集いに参加することができた事は故郷復興の力になりたいがどうすれば良いのかが分からなかった私にとって、道しるべとなるようなものでした。『無念の死を受け入れたたくさんの私たち』(「夢があるのなら」歌詞)のために今、自分たちには何ができるのか、それは歌うことでした。他の合唱団が歌っていらっしゃるのを聴いた時、その思いを私は確かに感じました。最後の全体合唱では、全体が一つになり、さらに思いが強くなったのを感じました。

全体での合唱はそれぞれ年齢も生活の環境も違うのですが、全員が一つになっているような感覚でとても幸せでした。また、外国からのビデオメッセージはほんとに心が温かくなるような感動を覚えました。人と人とのつながりが合唱を通して感じられたことが何よりも嬉しいです。

「あなたはどこに」の曲のはじめの「あなた」という言葉に思いを込めるようにと教えて頂いたときは、あらためて歌は相手に伝えるものだと実感しました。このレッスンを通じて、被災された方々や自分の大切な人を元気づけたり、励ますことができるのだと再認識することができました。

レッスンの際に誰に歌を届けたいのか、どんな事を想像して歌うのかと(新実先生が)聞いて下さり、それまでの自分のイメージに細かく色が付き、自分だけでなく相手に届けたいという思いが強くなり、曲を通して伝える事の無限の可能性を感じました。

仙台三桜高校音楽部の皆さん、心のこもった歌声をありがとうございました。また一緒に演奏できる日を楽しみにしています。

「つぶてソングの集い」プロジェクト
(浜中康子:文責)

「つぶてソングの集い in みやぎ」開催概要


第2回ウィーン・フィル&サントリー音楽復興祈念賞
つぶてソングの集い in みやぎ
    音楽の架け橋 〜杉並・ふくしま から みやぎへ〜

日時:2014年3月28日(金)18:30開演(18:00開場)
会場:名取市文化会館 中ホール
主催:「つぶてソングの集い」プロジェクト
共催:(公財)名取市文化振興財団
監修:新実徳英
後援:(公財)宮城県文化振興財団、 (公財)仙台市市民文化事業団、
    (公社)宮城県芸術協会、宮城県合唱連盟、河北新報社、東北放送、
    仙台放送、宮城テレビ放送、東日本放送、エフエム仙台
定員:350名(先着順受付)
参加方法:参加費は無料ですが入場整理券が必要です。

■出演
NHK仙台少年少女合唱隊
仙台三桜高校合唱部
宮城教育大学・東北大学学生有志による混声合唱団
名取混声合唱団

佐藤淳一(テノール)
鷹羽弘晃(ピアノ)  浜中康子(ピアノ)
金沢里左(フルート) 中村肇(トランペット)
村田厚生(トロンボーン) 他

新実徳英(指揮・お話)
和合亮一(朗読・お話)

司会:朝岡聡

■プログラム
・つぶてソング(全12曲)より(詩:和合亮一/曲:新実徳英)
・「手をのばす」      (詩:俵 万智/曲:新実徳英)
・「ここにいる」      (詩:文月悠光/曲:新実徳英)
・「聞こえる」       (詩:岩間芳樹/曲:新実徳英)
= 楽譜について =
当日、メロディ・歌詞付きの楽譜を配布します(終演後に回収します)。 女声合唱版・男声合唱版・混声合唱版は、音楽之友社より発売中です。 メロディとピアノ伴奏版は、ネットからご購入できます(「東京ハッスルコピー」 オンラインストア

■助成
第2回ウィーン・フィル&サントリー音楽復興祈念賞
「ウィーン・フィル&サントリー音楽復興祈念賞」は、東日本大震災を機にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とサントリーホールディングス(株)からの寄附をもとに、公益財団法人サントリー芸術財団に設立された基金の助成事業です。クラシック音楽を主体とする演奏活動・音楽普及活動等が対象の応募制で、音楽を通じ被災地および日本に活力を与え続けたい願いから、2012年から10年間行います。 http://suntory.jp/fund/  

■お問合せ
「つぶてソングの集い」in みやぎ事務局 (FCT仙台支社内)
TEL:022-261-3300 (受付時間:平日10時〜17時) 

■ご案内パンフレット